2020.08.24 教育
DSDAって何?(1) 〜生徒・受験生向け〜
Q. 東京女子学園のDSDA(Data Science, Design & Arts)って何ですか?
A. Data Scienceを中心に説明します。すぐにこれって数学じゃない、と気づくかもしれませんが、実はDesign & Arts のセンスもData Scienceには欠かせません。最初に統計学の歴史を振り帰ってみましょう。
◇ 統計の始まり
中学・高校では「確率」と「統計」を学びます。統計の始まりは古く、紀元前のローマではすでに人口調査が行われています。徴税や徴兵のためには人口を正しく把握する必要がありました。日本では大宝律令のもと班田収授が行われています。一方、確率は賭博に数学を役立てて儲けたいことから研究が始まります。いずれも学問としてきちんと体系化するのは18世紀ごろからです。
◇ 統計学の発展
中学・高校ではデータを集計し、それを記述することを学びます。グラフで表記したり、平均や分散などを求めます。これらは記述(古典)統計学とよばれています。この集めたデータは大きな母集団の一部です。この一部(標本)から全体(母集団)の特性を探るのが推計統計学とよばれるものです。20世紀初頭にフィッシャーによって研究されました。大学では応用を含めて推定や検定を勉強します。もう一つベイズ統計学とよばれる統計学があります。18世紀にベイスによって提唱された統計学で、「結果から原因をさぐる」統計学です。ベイスはこの理論を見つけたとき、「神の存在を証明できた」と主張しました。その後、二百年もの間、日の目を見なかった理論ですが、第二次世界大戦の暗号解析などでは活躍しました。そして近年、フィルタリング、検索、気象予報、新薬開発、人工知能の基礎となる機械学習などで大活躍しています。
Bayes, Thomas (1702 – 1761)
https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Bayes/
Fisher, Ronald (1890 – 1962)
https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Fisher/
◇ データサイエンスの登場
20世紀初頭に登場した推計統計学にもとづく推定や検定などはビジネスに大きく貢献しました。第二次世界大戦においても戦略立案、暗号解読、兵器の生産管理などにも使われました。この大戦では多くの計算処理が必要となり、このときに登場したのが電子計算機(コンピュータ)です。戦後75年、その性能は飛躍的(指数的)に向上しました。
17468本の真空管を使って作られたENIAC
https://ja.wikipedia.org/wiki/ENIAC
世界初の携帯電話(1994年)
IBM Simon Personal Communicator
https://ja.wikipedia.org/wiki/IBM_Simon
90年代になると個々のコンピュータがつながります。インターネット社会の始まりです。そしてみなさんが自由にスマートフォンを使う今日の情報化社会となります。統計学の標本もビッグデータへと大きく変貌します。このような状況のなかで、近年、統計学、情報科学、アルゴリズムなどの諸分野を横断的に扱い、データから新たな知見を導く学問が登場します。それがデータサイエンスです。
◇ 不足する人材
データサイエンスをきちんと習得するには統計学・情報科学そしてビジネスと多くの知識を必要とします。下の図は一般社団法人データサイエンティスト協会がまとめたデータサイエンティストになるためのスキルです。これらをすべて備えれば世界でも引く手数多の逸材になれます。しかし残念なことに日本ではこの分野の教育が遅れてしまい、人材が不足しています。今多くの新設大学や学部がデータサイエンスの教育を目指しています
http://www.datascientist.or.jp/files/news/2014-12-10.pdf
Q. 先生、もう完全に数学じゃないですか。つまんない!
A. 確かにちょっと難しいかな。みなさんはスマホを自由に使っていますよね。
でも100年前、それこそ18世紀のベイズの時代からみればみなさんは神様のするようなことをしているのです。同じようにみなさんにとって今はデータサイエンスはとても離れた存在かもしれません。でもできればスマホを操るようにデータをいじってほしいのです。数学が苦手でもまったく問題ありません。スマホをいじるのに数学のことなんか考えないでしょう。何が大切かというと、数学の計算力や公式の暗記ではなく、数学的な思考やそのセンスがすべてなのです。こうなってくるとまさにData Science, Design & Artsなのです。数学と芸術に実は境目はありません。昨年ですが、東京藝術大学社会連携センターではつぎのような展覧会を開催しました。そのつぎの作品はData Artist 、Kirell Benziの作品です。彼はDataとAIを組み合わせた作品を発表しています。Galleryを訪ねてみてください。
https://www.geidai.ac.jp/news/2019040275635.html
https://www.kirellbenzi.com/gallery/
◇ 東京女子学園のDSDAについてもっと詳しく(クリックすると別ページにジャンプします)